櫓太鼓がきこえる
鈴村ふみ(著)
集英社から刊行予定
あらすじ
高校を中退した十七歳の篤は、親から無言の圧力がかかる中、行方の見えない毎日を過ごしていた。その現実から逃げ出すため、相撲ファンの叔父のすすめで相撲部屋に「呼出」の見習いとして入門することに。関取はおらず、弟子も少ない弱小部屋とも言える朝霧部屋で、力士たちと暮らし、稽古と本場所を繰り返す日々が始まった。
部屋違いの呼出である直之さんは、歳は同じながら角界入りは二年早い兄弟子である。声のよさと愛らしい顔立ちで人気があり、すでにファンもついていた。面倒見もよく、篤に助言をくれたり、相談に乗ってくれたりと、ありがたい存在だった。
部屋の兄弟子力士たちは、将来を期待される者もいるが、多くは結果を残せずにいる。昇進への焦り、親への思い、不安や諦めなど、それぞれが葛藤を抱えながら土俵に上がる姿を、篤は傍らで見つめていた。
呼び上げの腕を上げるため、篤はベテラン呼出の進さんに教えを乞うが、本番で四股名を取り違える失態を演じるなど、しくじってばかり。部屋に戻れば、兄弟子力士たちの不調、大怪我、引退などの出来事が重なり、篤は落ち着く暇も無い。九州場所、初場所、春場所と続く目の前の仕事を、何とかこなしていくしかなかった。
そんなある日、直之さんのファンだと思っていた若い女性から、今は篤のファンで、篤のことを応援していると告げられる。一方、歳の近い先輩呼出の光太郎からは、嫉妬が原因で執拗なまでの嫌がらせを受け始める。喜んだり悲しんだり、とまどいつまずきながら、今日も篤は土俵の上で声を張り続ける。
受賞詳細ページ(集英社)
第33回小説すばる新人賞の選考結果が9月16日に発表され、鈴村ふみさんの「櫓太鼓がきこえる」に決定しました。鈴村ふみさんは1995年、鳥取県生まれ。
第33回 小説すばる新人賞について
- 選考委員
- 阿刀田高 、五木寛之、北方謙三、宮部みゆき、村山由
- 賞金
- 記念品、200万円
- 掲載誌
- 「小説すばる」11月号