第15回 内田百閒文学賞(2020)

最優秀賞

第15回 内田百閒文学賞

たまゆら湾

江口ちかる(著)
作品社から刊行予定

あらすじ
シニア向け文学賞にKが応募した小説『たまゆら湾』は、昭和30年代後半の耐火煉瓦工場が建ち並ぶ岡山県備前市三石を舞台に、少年、明が古本屋「たまゆら堂」の店主、美耶子に寄せた恋心が描かれていた。“両側から山にじわじわと締めつけられている町”で、屈折した思いを抱えている明は、美耶子と一緒にいる時間が心のよりどころとなる。だがある日、美耶子は町から姿を消した。小説の中で明は、美耶子と不本意な別れをし、彼女の幸せを願う。

そんな中、小説『たまゆら湾』に登場する店主は母がモデルではないかという手紙が届く。


優秀賞

岡山駅から

松本利江(著)
作品社から刊行予定

あらすじ
岡山市内に住むチエと奥備中に住む従兄弟の昭夫と英夫は、お互いの家を行き来し、楽しい時間を過ごしていた。3人にとって岡山駅はいつも楽しみの入り口であった。しかし、昭和20年、英夫が「満蒙開拓青少年義勇兵」として15歳で満州に渡ることになる。チエは、岡山駅に見送りに行き、晴れ着の切れ端で作った御守袋を英夫に渡した。岡山駅は悲しみが詰まった建物に変わってしまっていた。
終戦から1年が過ぎた時、満蒙開拓青少年義勇兵の一員として満州に渡った仲間の少年がチエが作った御守袋を手に訪ねてきた。

馬場友紀(著)
作品社から刊行予定

あらすじ
昭和19年、信子は倉敷の軍需工場で働いていた。「産めよ殖やせよ」の時代、20代半ばの信子は、「嫁き遅れ」と言われ肩身の狭い日々を送っていた。ある日、仲人さんが縁談話を持ってきた。気が進まない信子だが、写真を見て何処かで会ったことがある気がする。しかし、外地で長男を亡くした母は、外地に行く予定のその男性との縁談を断ってしまう。その夜、以前に駅で会った男性だと思い出し、赤い糸でつながっているかもしれないと胸が高鳴った。
そんな中、岡山大空襲で被災した伯母の一家が同居することになり、琴の貸し借りをめぐってちょっとしたわだかまりを持つ。戦争最末期に青春を送った女性たちの生き様が描かれている。


第15回 内田百閒文学賞

選考委員:小川洋子、平松洋子、松浦寿輝
応募数:396作品
賞金:最優秀賞100万円、優秀賞20万円
掲載:作品社から刊行予定

関連リンク
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