化け者心中
蝉谷めぐ実(改名前:蝉谷魚ト)(著)
KADOKAWA
あらすじ
時は文政、所は江戸。鳥屋を営む藤九郎は稀代の女形として人気を誇った元役者の魚之助に呼び出され、中村座の座元の許へと向かう。数日前『堂島連理柵』という新作台本の前読みを役者六人で車座でおこなった際、輪の真ん中に誰かの頭がごろぅり、転げ落ちてきたという。しかし役者の数は変わらず、鬼が誰かを食い殺して成り代わっているのは間違いない。二人は「鬼探し」の道行と洒落こむが、それは同時に、役者たちが芸の道をきわめるために鎬を削る地獄めぐりでもあった。梨園の知られざる闇、血のにじむような努力や才能への渇望、葛藤を目の当たりにするうちに、藤九郎は、人と鬼の境目に深く思いを致すことになる。
芝居中、熱狂的な贔屓に襲われて足を失い、悪態をつきながら失意のうちに過ごす魚之助をなんとか舞台に戻してやりたい、その一念だった藤九郎だが、“傾奇者”たちの凄まじい執念を目の当たりにするうち、心も体も女形として生きてきた魚之助の人生や役者としての業と正面から向き合うことになり――。
善悪、愛憎、男女、美醜、虚実、今昔――すべての境を溶かしこんだ狂おしくも愛おしい異形たちの相克。
奨励賞
嘘のくに
吾野廉(著)
最終候補作品
「パリ連続殺人」 小早川真彦(著)
「ヘブンズ・トーク・プラン」 宮下甲(著)
第11回 小説野性時代新人賞
選考委員:冲方丁、辻村深月、森見登美彦
応募数:440作品
賞金:100万円
掲載:小説 野性時代
関連リンク
第11回 小説 野性時代 新人賞の選考結果と受賞作
発売前から、絶賛につぐ絶賛の嵐!!全選考委員を唸らせた規格外の大型新人デビュー!!「小説 野性時代新人賞」受賞作、蝉谷めぐ実『化け者心中』10月30日発売!
児玉竜一(早稲田大学文学部教授)×蝉谷めぐ実/芸界の情念に手をつっこんで