石に灯を灯す
牧野恒紀(著)
羽衣出版
あらすじ
恩多里志は四十三歳。かつてはITベンチャーの寵児として騒がれたものの、事業も家族も失い、西伊豆の松崎町に帰ってきた。町の北部に在する、石部の集落が故郷である。
帰郷の理由は長く交流の絶えていた父、達雄からの手紙だった。そこには「託したいものがある」とあった。息子なりに思うところがあり、復活した棚田で米作りに携わる父と再会したものの、彼は何を託そうというのか語ろうとしない。
里志は事業復帰までの猶予の場として松崎に滞在することにしたが、役場の臨時職員で達雄の弟子を名乗る水崎菜子、こわもて老人の三上禄郎、幼なじみの海美とのふれあいのなかで、棚田と達雄の今を知る。母の淑子の死後、彼女が慈しんできた田を、父は長らく護ってきた。
里志は、息子の恭一も関わったという棚田のビオトープでの野良仕事に参加することに。過去の大雨で失った蛍を呼び戻すためのプロジェクトである。
台風が棚田を襲った夜、里志は達雄の捜索に向かう。そこで父から大切なものを「託された」彼の前に、生きる標を示すように、失われたはずの蛍が舞うのだった。
受賞詳細ページ(しずおか文化)
優秀賞
天城へ
吉川道廣(*吉は土に口)(著)
佳作
海と亀の星
中嶋健二(著)
シャレコウベ、ふたつ
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